Creating Yourself

ビジネス本を中心に、読んだ本を紹介します。

RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる|デイビッド・エプスタイン

 

RANGE=幅

 

専門分野を極めた人が成功者になれる、というイメージがあります。

医者も弁護士もその分野の最難関試験に合格する必要があるし、寿司職人も10年間の修行が必要なんて言われます。

 

ですがこの本は、そうした玄人ではなく、広く浅く色々とチャレンジすることが成功の秘訣であることを、具体的な実例や調査結果などを交えながら解説しています。

 

高校のときに理系か文系かを選び、大学入学時には学部を選ぶ。

そこで選んだ道を迷いなく進むように言われます。

 

ですが、立ち止まったり寄り道したり、全く違う道に方向転換したり。

そうした"まっすぐではない道筋"が人に与えてくれるパワーってすごいんだと、この本を読んで初めて知りました。

 

 

 

天才と言われたウッズやポルガー姉妹の育て方は通用しない

 

言わずと知れたゴルフの神童、タイガー・ウッズ

0歳からスイングの真似をし、2歳で競技会に参加し10歳以下のクラスで優勝。

4歳の頃には1日8時間以上をゴルフの練習に費やしたそう。

 

 

そしてポルガー三姉妹。

日本人にはあまりなじみがないですが、チェスの天才姉妹。

長女には3歳からチェスを教え、4歳の時に10歳以下のクラスで優勝。

長女が17歳の時、男子の世界大会に参加できるレベルに達します。

この時は性別を理由に参加が認められなかったものの、彼女のためにすぐにルールが変更されました。

その後の女性チェスオリンピックで、代表チーム4名のうち3人が三姉妹で占めた事実を見ても、姉妹の際立った強さがわかります。

 

 

この2つの例、共通しているのは

  • それぞれの分野で天才と呼ばれるほど実力を身につけていた
  • かなり小さいうちから、その道一筋で腕を磨いてきた

というもの。

「子どものうちから分野の英才教育を施し、ひたすら訓練することが天才を育む手法か?」と思われますが、実はそうではありません。

 

ゴルフやチェスは、決まった範囲内ですぐに結果が見える(=パターンが固定化している)競技なんです。

 

ゴルフでは、スイングとボールの当たった場所・力で、大体ボールの飛ぶ場所が予測できますし、チェスもパターンとしてまとめられています。

 

そのため、いわゆる「1万時間の法則」に則って時間をかけて大量に経験を積むことで、その分野で強くなることは比較的難しくありません

 

しかし現実世界はゴルフやチェスとは違います。

新しいトレンドや予想外の展開にうまく対処しなければならない分野の方が圧倒的に多く、そうした分野では、ウッズやポルガー姉妹のような特化した訓練では歯が立たないのです。

 

他分野で得た経験や知識を応用するスキル

 

実績を残す科学者を見ると、本業以外に本格的な趣味や副業(ダンサー、マジシャン、絵画、作家など・・・)を持つ人の割合がとても高いとのこと。

 

自分がこれまでの人生で身につけた知識を、新たな状況や別の分野に適用する能力が現代の生活では求められています。

 

音楽の世界に目を向けてみましょう。

音楽学校やプロのミュージシャンなど、音楽の世界に身を置く人について幅広く調べた結果、優秀な音楽家は、いくつも楽器を習得していたんだそうです。

 

 

私のイメージでは、例えばピアノの世界で成功する子は、少しでも早い低年齢からピアノを専門に途方もない時間を費やして練習して、テクニックを磨いていくのだと思っていました。

しかし、実際にはピアノ・ギター・打楽器など、一見脈絡もないように多種多様な楽器の経験を経て、好きなもの・上手にできるものを絞り込んで一気に集中して練習した子のほうが、習熟度が高いとのこと。

 

例えばビートルズのベース担当のポール・マッカートニーは、キーボードもドラムも演奏できます。X JAPANのYOSHIKIさんも、ピアノで美しい音色を奏でたり、ドラムを激しく叩いたりと表現のが非常に広く、いずれも素晴らしい音楽を世に送り出しています。

 

訓練の幅の広さは、応用の幅の広さにつながる。(P109)

 

ダークホースは例外ではなく王道

 

各分野で突出した業績を上げた人に対する幅広い調査を行った結果、50人中45人が「一筋縄では行かない経歴」「まがりくねったキャリアパスを辿って今の地位を得た」人たちでした。

 

しかもそのほとんどの人が「自分は例外」だと思っていたそう。

 

まっすぐな人生(医学部から医者になったとか、ロースクールから弁護になった、など)の人よりも、多様な分野で経験を重ねた人の方が視野も広く、成功しやすい。

 

本書でも、先日ご紹介した『ダークホース』が取り上げられていました。

 

creating-yourself.hatenablog.jp

 

子育てでも学校での教育でも、「若いうちから道を一本に絞って、その目標をやり抜くように」と伝える場面は少なくないですが、これは正しい助言ではありません。

高校生の自分と、30代になった自分が同じものに興味を持っているとは限らない・・・というか、そんなことの方が珍しい。最初に選択したもの(理系か数学か、どの学部か、等)にこだわり続けるのではなく、その時に自分が興味を持つもの・好きだと思うことをとことん経験して行った先に、成功が待っていると信じています。