お金を増やしていくために、とにかく株式を買い続けよーーー
それが本書のタイトル、『Just Keep Buying』のとおり、筆者の一番のメッセージだった。
投資初心者に限らず、中級者や上級者にとっても興味深い内容が盛りだくさんだし、客観的なデータや実際のエピソードが豊富で非常に説得力がある&読みやすい。
今回は図書館から借りたけれど、ぜひ家の本棚に常に置いておきたいと思った。
本記事では、特に印象的だったポイントに絞っているが、他にもこのように、誰もが一度悩んだり困ったりしたような事柄について、分析され筆者の考えが示されている。
- 借入は悪か?効率よく使い、”武器”にするには。
- 持ち家vs賃貸
- 投資を始めるべき最適のタイミングは?
- 一括購入か、分散投資か
- いつ売るのが最適か
貯金力アップ編
本書は大きく二部構成になっており、最初は「貯金力アップ編」である。
投資をしようにも、元手が少ないと効果は得にくい。
まずは投資の種銭をどのように増やしていくのか、しっかり正しい知識を身につけよう。
収入を増やすVS節約する
筆者は、節約よりも収入を増やす努力をすることを推奨している。
統計上、節約には限界がある。
何歳になっても実家に住み続けられたり、極端な節約生活が苦にならなかったりする人は節約も良いが、こうした手法は再現性が低く、多くの人が取れる方法ではない。
毎日もやしばかり食べて、夏や冬の空調を抑えればある程度の金額は節約できるが、それだと心身の健康にも影響を及ぼす。
一方、収入を増やすためには、方法もいくつかあり再現性も高い。
副業が日本の社会にも浸透しており、副業で比較的簡単に収入アップが実現する。
ただ、副業と同じくらい筆者は本業(いわゆる9時〜17時の仕事)の大切さを訴えている。
自由な働き方が浸透し、会社に雇われずに自由に過ごす生活に憧れる人も多い。
しかしアメリカのミリオネア*1を分析すると、弁護士や医者などの専門職が多くの割合を占め、意外にも起業家で一山当てた人は少数派である。
高給の専門職を30年以上コツコツ勤め、結果としてミリオネアの仲間入りをするというのが王道パターン。
そうすると、学生時代に勉強に励み良い会社に就職するか難易度の高い資格を取り、会社勤めをするのが、ミリオネアを目指すための手堅い手法と言える。
また、仮に起業家として大きな収入を目指したい場合であっても、会社勤めで得られる経験やセンス、知識は欠かせない。会社のトップとして、やはり社会人的な常識やセンスが欠けると信頼もなかなか得られるず、成功につながらないからだ。そういう意味でも、いわゆる会社勤めには意義があるのだ。
投資力アップ編
ある程度の種銭が貯まってきたら、いよいよそれを育てていくために投資を実践する。
投資先は現金・株式に限らず、債券や不動産など多岐にわたる。
それ以外にも、いつ買うのか・いつ売るのか・どう買うのか・・・と、色々と悩む人も多いだろう。
現金より投資?
何に投資をして資産を築くべきかを考える前に、まず、現金を持ち続けることのデメリットから確認すべきである。
最近日本でも、NISAが普及して投資をより身近に捉え、実践する人も増えた。
ただ、やはり先進国の中でも日本は現金で資産を持つ人が圧倒的に多く、投資についてはまだまだ諸外国と比較すると遅れていることは否めない。
事実、私も幼い頃から親から「投資は怖い、現金が安心」と教えられて育ち、投資の必要性や重要性を学んだのはここ6年くらいである。
現金の最大の弱点は、長期的(3年以上)のスパンではインフレ(物価上昇)に対応できず、実質的な価値がどんどん目減りしてしまうこと。
テレビのニュースでも、連日のように食料品や光熱費、日用品の値上げの報道を耳にする。税金も上がり、毎年の定期昇給分以上に、生活費は値上がりしているのだ。
少しデータは古いが、例として新聞の価格を見てみよう。
2013年に月額約4,000円の新聞は、1980年には1,800円と半額以下だった。
つまり、1980年から2,000円を現金で持っている人は、当時は月額の購読量を支払えても今はその半分にも満たない価値しか持っていないことになる。
上記は分かりやすいように40年とかなり長期的な比較をしたが、3年ほどでもインフレの影響は大きく受けるため、現金ではなく株式・債券・不動産などの他の資産に投資することを推奨している。
何に投資すべきか?
筆者は、株式への投資を推奨している。
中でも、個別株ではなくインデックス投資がおすすめされており、この点は私も強く同意する。個別株の投資は、大きく資産を伸ばせる可能性を秘めているものの、定期的に投資先の会社の財務・事業をチェックして場合によっては投資先を変更する必要がある。
財務知識に乏しく、また日々の生活に忙しい私の場合、それらを綿密にプロが対応してくれるインデックス投資ファンドへお金を預けることが、総合的に見て最適解であると今は考えている。
未来のことは誰にもわからないものの、激動だった20世紀*2の世界の株式市場の変遷を見ても、長期的には右肩上がりに成長し、価値を大きく伸ばしている。
1925年に米国債券市場に1ドル投資していたら、2020年末には200ドルに、米国株式に投資していれば1万937ドルになっていたと計算できる。
物価上昇率を加味したとしても、非常に大きなリターンである。
不動産投資
不動産投資は、株式・債券に次いで人気である。
ただ、以下のデメリットがあることは十分認識・理解した上で戦略を練るべきだ。
- 必要な資金は、株式・債券と比較してもかなり多い。
- コロナなど、不測の事態の影響を株式よりも大きくかつ長期的に受けるリスクがある。
- メンテナンスの手間と費用が大きい。
まず、1点目。
安い物件を購入するにせよ、数百万円単位でお金がかかる。つまり、それだけの大きな金額を一つの資産(=物件)に投資することになる。
一方で、株式や債券は1株だけであれば数千円程度であり、同じ数百万円を複数の銘柄に投資することで分散投資が可能である。
2点目は、不測の事態の影響が大きいということだ。
コロナの際は当然株式も大きく下げた。ただその後数ヶ月で取り戻している。
一方、コロナの混乱や行動制限は数年単位に及んだことから、民泊事業など不動産を利用したビジネスは長期で大きくマイナスの影響を受けていた。
そして3点目はメンテナンスの負担についてである。
株式や債券は、自分でポートフォリオを組むこともできるが、私のように子育てをしながら働くなど多忙な人は、必要なメンテナンスの大部分をプロにお任せでき、手数料も破格の安さであるファンドやETFといった投資商品を気軽に選択できる。
一方、実際に不動産を保有すると、物件そのものの維持・修繕費、ローン、固定資産税などお金周りの対応、入居者との調整などの手間がかなり負担となり。
外部の業者に一任するにしても、インデックスファンドの手数料とは比較にならない高額の料金が必要になる点は、注意が必要だ。
実際に不動産を保有することに抵抗がある場合は、REIT(不動産投資信託)も選択肢に一つになるだろう。
~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ *